職場スタッフに贈った退職プチギフト

私は30代男性、今は広告代理店で働くバリバリの営業マンです。前職は全く違うジャンルでアパレル関係の職についていました。昔からおしゃれな洋服やファッション業界に興味があったので、自然な流れでアパレル関係の会社で働き始めていました。毎日楽しく働いていつの間にか10年の月日が流れていました。

私は時の早さに驚きつつ、今後自分がどういう生き方をしなければいけないか…と考えるようになりました。なぜかというと、私は30歳になり、結婚して妻のお腹に新しい命が宿ったからです。このまままでは、毎日楽しく過ごせるのだが…今の職場では家族3人を養うことは出来ない。しかし、今の仕事は私のやりたい仕事。そんな悩みが日に日に大きくなっていきました。そして、やはり背に腹は変えられぬ!ということで、アパレル関係の仕事から広告代理店で働く事に決めたのです。広告代理店にしたのは、アパレル関係から完全に縁が切れるわけではないからです。

しかし、10年働いた職場を去るのは断腸の思いでした。

5年目から私はそのお店の雇われ店長という肩書きになり、信頼出来るスタッフもできて、売上も上がってきました。顧客も増えて、お店の雰囲気も明るくなりました。スタッフと会議話をしても展望のある話が多過ぎて、とにかく楽しみが尽きない感じでした。

その中での私の退職

スタッフ達は見るからに戸惑っていました。私も正直、このまま給料が上がるお店で、賞与も決まって支払われる安定した会社であればまだ考える余地もありました。しかし、アパレル業界はそんな生易しいものではありません。隣のお店や、系列店さえも敵です。お客さんを食い合わなければいけません。その際に安定という言葉は存在しません。食う時もあれば食われる時もあります。これは仕方の無いことです。そのことをお店のスタッフに真剣に話すと、さすがのスタッフも納得してくれました。それもその筈、彼らもいずれ直面する現実だからです。

私はそんは信頼したスタッフ達に退職のプチギフトとして、一冊の本をあげることにしました。

その本は私の愛読書でニーチェの本でした。

私は哲学なんて柄ではないのですが、このニーチェの本だけは妙に共感出来たし、これが私のアパレル関係への仕事への踏ん切りをつけてくれた、と言っても過言では無い、とにかく影響を受けた本だったので、これをスタッフへの置き土産と決めました。押し付けがましいかもしれませんが、若いスタッフ達に今後の未来を切り開くのは自分だ…!と今のお店わ、踏み台にすれば良い、と私は伝えたかったからです。何故なら私の働いていたお店は若い子がメインで、有る程度年を取ると皆辞めて行くそんなお店だからです。

私が広告代理店で働き始めて5年が経ちました。

私が働いていた服屋さんは今でも後輩のスタッフが働いています。たまに顔を出して服を買うのですが、皆元気そう。先日、Facebookで後輩スタッフが私があげたニーチェの本を取り上げている投稿を発見しました。なんでもその後輩、お店を辞めて新たな道を歩む、とのことでした。引き金はニーチェの本、そしてそれを彼に託した私だということが書かれていました。

私は涙ながらに『いいね』を押しました。